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Subsequence

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Dissertation

Samuel and Stephen's Works

世界中の工芸と文化にまつわるトピックスをオルタナティヴな視点で発見し、発信する実験的なメディアプロジェクト「Subsequence」。
その主軸コンテンツである雑誌で、創刊号から連載している〈visvim〉〈WMV〉のファッションページは、ロンドンのカメラマン、サミュエル・ブラッドリーとスタリスト、スティーヴン・マンによる仕事。毎号、編集部からの注文は「本誌テーマに沿うものであること」のみ。二人のクリエイティビティが溢れんばかりに表現された迫力あるページは、大判本誌でご覧いただきたいですが、ここでその一部をご紹介します。

Category:Products
Date:2024.10.08
Tags: #samuelandstephen'sworks #subsequence #visvim

2024年9月、東京中目黒の「VISVIM GENERAL STORE / VISVIM GALLERY」にて、雑誌『Subsequence』第7号の発売を記念して開催された写真展のためのインタビュー。

サミュエル:

私にはファインアートとドキュメンタリーのバックグラウンドがあり、作品はリチャード・アヴェドン、植田正治、ドロシア・ラングなどから大きな影響を受けています。そしてそれは、ブランドや雑誌の仕事にも反映されています。ただ、ファッション撮影の場合、コンテンポラリーなランウェイで目にするような服は、自分が目指すディレクションを妥協する原因になることがあります。visvimは、他の多くの大手メゾンが作るコレクションに比べ、着込んだような風合いの服を作っていて、ヴィンテージに近いものを感じています。それが、服の印象を損なわず、ディレクションの一部になりやすいので、現実感のある稀有な「ファッション写真」を撮ることができるのです。「Subsequence」の仕事を続けてきたのは、それがvisvimの服だからです。それは、タイムレスなイメージを作るために欠かせない要素なんです。

スティーヴン:

Subsequence」の仕事はいわゆる商業的な仕事と違って、創作過程を楽しむ時間と自由があります。そして、すべての良いものがそうであるように、それは時代を超越した感覚を持っています。長年親交のある人たちと協力し、作りのよいプロダクトのために仕事ができるのは喜ばしい関係です。

最近はオンラインプラットフォームが主要なメディアとなり、印刷ビジネスの規模は縮小しているため、それに関わる仕事は減っています。そうした中にあって、このプロジェクトはとても貴重なものです。

"Cast a Giant Shadow"
"Cast a Giant Shadow"

これまでの掲載ページに対するサミュエルのノート。

"Cast a Giant Shadow" published in Subsequence vol.1(2019)

Subsequence」を含め「雑誌」のために私とスティーヴンが一から協力して作った初めての特集です。ちょうどその少し前に雑誌「Brutus」のvisvimの撮影を二人で手がけたばかりで、それがvisvimとの初めての仕事でした。

企画を詰める際、プロップの候補として巨大なデニムのセットアップ(50年代、Lee社が広告で使っていたセットアップにインスパイアされたものだろうかと考えていました)が上げられていて、これを使ってオーバーサイズのシルエットを作ることにフォーカスしたんです。そこから『Cast A Giant Shadow』というタイトルを思いつきました。これは世界一身長の高かった女性サンディ・アレンの伝記にちなんだものです。

"House of Joy"

"House of Joy" published in Subsequence vol.2(2019)

スティーヴンは、スタイリングを考えるにあたってサウンドシステムカルチャーに興味を向けていました。一方、私が参考にしたのは、1952年に「Time Magazine」のためにゴードン・パークス(写真家)とラルフ・エリソン(作家)が共同制作した作品でした。それは、エリソンの著書『The Invisible Man』にインスパイアされたパークスが、ハーレムにおける小説の重要なシーンの数々を描いた一連の写真作品です。この作品の主人公である黒人は、ドキュメンタリーのようなイメージで表現されていますが、実は幻想。それと同じような感覚を目指して、非現実的な感覚を持ったドキュメンタリーにしたいと考えました。

"Difficult Beyond Here"
"Difficult Beyond Here"
"Difficult Beyond Here"

"Difficult Beyond Here" published in Subsequence vol.3(2020)

Subsequence」の撮影へのアプローチの仕方が変わった時だと思います。それまでは、服を起点とした短いフォトエッセイとして撮影に臨んでいましたが、この号では、スティーヴンと私とで、より演出的なコンセプトを考え、重い荷物を背負って山を登るシェルパの写真から着想を得た大きなリュックサックのイメージから始まりました。チームが大きくなったのもこの号からで、アイデアを実現するためにセットデザイナーを起用しました。この特集は、私がこれまで雑誌のために制作したものの中で一番気に入っていると言えるかもしれません。コンセプトの検討から、それを形にする撮影まで、すべて自分にとって心地良い企画でした。この時に撮った写真は、それ以後の自分の作品に大きな影響を与えています。

"This is the Life"
"This is the Life"

"This is the Life" Published in Subsequence vol.4(2021)

見ての通りサイクリングをテーマにしています。スティーヴンが「The Rough Stuff Fellowship Archive」という本を見せてくれたのですが、それは1955年に始まったオフロード・サイクリング・クラブについてのものでした。ちょうど同じ頃、偶然、私もエベレストのベースキャンプまでサイクリングする人達についての本を読んでいたのですが、その本も近い内容で、現代のサイクリストがロードバイクのような自転車での壮大なクロスカントリー、あらゆる地形での旅を走破した話でした。狂気的で無謀なチャレンジのように思えますが、とてもインスバイアされました。

私はこの特集にもっとストーリー性を持たせようと、COVIDの間、写真とテキストの関係を様々試すことに多くの時間を注ぎました。写真に添えるとてもシンプルなストーリーを書き、暗室で作ったハンドプリントをスキャンする時に、選んだ文章の一部を切り抜いて貼り付けたり、ロケ地や周辺の町の地名を参考に、ラベルメーカーでカスタムステッカーを作ったりもしました。

ダートムーアという、私が育った場所の近くにあるイングランド南西部の美しい国立公園で撮影したこともお伝えしておきたいです。そこで2日間かけて自転車を組み立てて撮影を行いました。子供の頃、多くの時間を過ごした場所での撮影は、自分に取って感慨深いものでした。母親も現場に来て、撮影チームと一緒にお茶を飲んだんですよ。

"Seas The Day"
"Seas The Day"

"Seas The Day" Published in Subsequence vol.5(2022)

これにはいくつものレファレンスがありました。その中でも最も著名なのはスヴェン・ユルヴィンドという人物で、スウェーデンの風変わりな船大工であり、自ら設計・製作した小さな船で大洋を航海することで知られています。写真に添える文章を書くにあたって、彼についてのたくさんの本を読みました。そうした本の登場人物の視点から物語を書いてみたいと思ったのです。それから、ラドヤード・キップリングの『The First Sailor』という短編小説からもヒントを得ました。

メインの写真のいくつかは、デュアン・マイケルズの作品、特に彼の9枚の写真シリーズ『Things Are Queer』にインスパイアされました。最後の写真には、嵐の海で小さなボートに乗った少年が自分の写真を抱いている姿が映し出されていて、このシリーズを意識していることを明示しています。

"Derby Rotten Scoundrels"
"Derby Rotten Scoundrels"

"Derby Rotten Scoundrels" Published in Subsequence vol.6(2023)

これまでで最も野心的なコンセプトだったと思います。写真の仕上がりにはとても満足していますが、同時に最も大変な撮影でもありました。このストーリーは、もちろんソープボックスレースにインスパイアされています。親友であり共同制作者でもあるステイシー・リーと一緒に車のデザインとセットの実現に取り組めたことは嬉しかったです。

ステイシーと私が一緒にデザインした車に貼られたステッカーや、ダッシュボードに貼られた『エアバッグなし』の注意書きなど、写真の中には驚くほどのディテールが含まれています。特に気に入っているのは『How's My Driving? Call 1-800 Visvim』と書かれた車の後部に貼ったステッカーで、それはモデルのアンダースがクラッシュ後、怪我の処置を受けているシーンで使われています。また、ウィル・フェレルの映画『タラデガ・ナイト』にちなんだ演出もとても楽しい。この映画でのフェレルのキャッチフレーズのひとつは、『1位でなきゃ、ビリと同じだ!』というものがあります。表彰台は、これを具現化したものです。この撮影では、モデルではなく初めて俳優を起用しました。それが、写真をダイナミックでエモーショナルにしています。

"Los Vaqueros"
"Los Vaqueros"
"Los Vaqueros"

"Los Vaqueros" Published in Subsequence vol.7(2024)

仕事に取り組む際の「アイデアを膨らませる苦労」を探ることに興味があります。『Loads(負担)』というタイトルの長期的な個人プロジェクトが進行中です。3号でこのテーマに対する興味が芽生え、7号はその続きです。雑誌とのコラボレーションが続けば、もっといろいろなものを積み重ねていくことになると思います!

何がきっかけでロバに興味を持ったのか正確には覚えていませんが、インゲ・モラート、ワーナー・ビショフ、フェルディナンド・シアンナなど、マグナムの写真家から参考にしたイメージがありました。歴史的な写真を見ると、人類の発展においてロバがいかに重要な役割を果たしてきたかがわかります。また、このストーリーの背景には、コーマック・マッカーシーの物語、特に彼の『国境』三部作があります。私はこれらの小説を45回は読んだはずです。アメリカ南部とメキシコの鮮烈なイメージが描かれていて、脳裏に深く刻み込まれています。『Los Vaqueros』というタイトルは、その作品へのオマージュです。先ほど、6号が最も大変だったと言いましたが、この撮影で『ロバのように頑固』という言葉の意味を学びました。

サミュエル・ブラッドリー

イギリス出身の写真家。UCAファーナム校でファインアートと伝統的な写真術を学ぶ。ファッションブランドや美容メーカーなど多くのクライアントを持ち、現在は写真にとどまらず、映画やミュージックビデオなど映像作品でも活躍する。

スティーヴン・マン

イギリスを拠点に活躍するスタイリスト。ジャンルレス、タイムレスな独自のファッション感を持ち、ブランドの個性を引き出す仕事に多くの支持を得ている。

ブランディングや撮影監修などファッションにまつわる様々なオファーに応えるクリエイティブ・コンサルタント。

Web Storeではサミュエルとスティーヴンの写真作品を販売しています。

visvim WMV Official Web Store

2024.10.8 Republished with revisions
2024.2.6 Original work published