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visvim (表参道)

2014年にオープンした東京・表参道のフラッグシップストア「visvim」が10年という節目を迎えるにあたり、店舗のリニューアルを行いました。visvimでは常にプロダクトが主役であり中心となるよう、店の空間はニュートラルであることを心がけていて、その基本的なコンセプトは変わりませんが、場所の個性やその時々に感じていることを反映しながら店作りをしていきたいと考えています。

Category:Shops
Date:2025.02.04
Tags: #GYRE #visvim #ビズビム #表参道

自分よりも高みにあるもの

2014年にオープンした東京・表参道のフラッグシップストア「visvim」が10年という節目を迎えるにあたり、店舗のリニューアルを行いました。visvimでは常にプロダクトが主役であり中心となるよう、店の空間はニュートラルであることを心がけていて、その基本的なコンセプトは変わりませんが、場所の個性やその時々に感じていることを反映しながら店作りをしていきたいと考えています。

このお店は「GYRE」という商業施設の中にあり、大きなスペースを活かすよう、アメリカの古い小学校で使われていた床板を再利用して床材にしていましたが、今回はすべて沖縄の石灰岩を使用して張り替えることにしました。軽くて脆さのある石の質感が外からの光を柔らかく受け止めることで、以前の重厚なイメージから、よりナチュラルで居心地の良い空気感へと変化したように思います。

店の入口には、東京・神田の工房「中むら」にお願いし、visvimの苧麻生地で作った「のれん」を設えました。近代的な商業施設の中で、お客様がのれんをくぐって店に一歩入ると、visvimの世界観を全身で体験していただけるように。大きな壁で空間を完全に分離するのでなく、障子や畳などの象徴的な境界で緩やかに"間"を仕切るのは日本の伝統的な建築で見られる手法です。内部に入っていくと、大きな開口部から表参道のけやき並木の緑が見え、また床材が屋外のベランダまで続いていることで「内」と「外」の空間がつながり、自然とコネクトしている感覚をもたらしてくれます。

什器は、以前の店舗では1910年代アメリカの洋品店で使われていた回転什器をレストアして、店のスペースに合うよう作り直したものを使っていました。その什器は15年ほど前にパリでの展示会に合わせて家具職人の方にお願いして作っていただいたものでしたが、今回は100年前のデザインや構造、メカニズムを踏襲したうえで、現代の店舗に合うスペックで一から新たなものを作ることができました。制作した職人さんは以前にお願いした方の息子さんで、代替わりしていますが、親子二代でプロジェクトに携わっていただき、ようやく新たな什器が完成したというわけです。僕たちのものづくりの世界では「昔は作ることができたが、今はもう作ることができない」という素晴らしいものがたくさんあるのですが、今回、長い時間を経てようやく昔のものを超えるものを作ることができた、進化させることができたことが嬉しかったですね。

そうした日本の職人の方が持っている「自分の尊厳のために技を高めていく」という精神はとても尊いものだと感じます。こうした方々がいなければ、僕たちのプロダクトは作ることはできません。彼らの心意気に対する感謝とリスペクト、またお客様への意思表示として、店の壁面の高い場所に大きな注連縄を作って設えました。藁で作った本物の注連縄は、作るのはもちろん、それを持ち上げて設置するのにも専門の職人の方々がいらっしゃいます。ものすごく重いので、持ち上げるのに大人の男性が十人以上も必要なんです。「自分よりも高みにあるもの」への畏敬の念を表す、シンボリックな存在として大切にしていきたいと思っています。

visvim
東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 2F
03 5468 5424

文:井出幸亮
写真:深水敬介

2025.2.4 Republished with revisions

2014.9.9 Original work published