VISVIM SHOW

ブランドを始めて１７年目になる。６ヶ月ごとに新しいものをデザインして、プレゼンテーションという形で商品を発表して販売するということを毎シーズン続けてきた。

当初から、自分らしい形式で見せたいという考えがあって、試行錯誤の結果、時にはシーズンのテーマに沿ったインスタレーションを展示したり、そしてまた別の時には、そのシーズンにこだわった素材や、開発の背景を商品と共に展示したり。営業チームに商品のテクニカルなディテールをプレゼンテーションしてもらったり。シーズンを重ねることで、自然と現在のプレゼンテーションでコレクションを発表するという形になっていった。それは、プロダクトの裏側にあるストーリーや、デザインや開発に込めた想いを表現できる自分たちらしい形。

１年ほど前に、フィレンツェでショーをやりませんかと誘われた。これまで自分たちが作ってきた形とは全く異なるフォーマットで、コレクションを見せるのはどうだろうか？ランウェイ（ファッションショー）で自分たちを表現するとしたらどんな感じのショーになるだろうか？手作りされた商品の温かい感じや、細部のディテールを作り込むことで生まれる情熱はどうしたら伝わるだろうか？

数年前にロンドンの郊外で見かけたジターバグダンスの愛好家のカップルたち。その時に感じた、暖かさや、ユーモラスな人間味が頭のどこかに残っていた。僕と妻のハートに響いたのは、純粋にダンスを楽しんでいる彼らから感じる、愛情だったり、情熱、喜び。そして、コマーシャルなものでは伝えられないリアルな何か。僕が、コレクションを通じて伝えたいことと、どこか共通している。すぐに、彼らを探し出してもらって、ショーに参加してもらえるように依頼した。

自然光でものをデザインしているから、自然光だけでショーをやりたい。できるだけデザインした時の環境に近い形で見てもらいたい。デザインが生まれるロスのアトリエにあるもので会場を装飾しよう。車も、バイクも、いつも音楽を聴いているスピーカーも。

参加してくれる、スタッフも、ダンサーも、お客様にもショーの一部になってもらおう。ほんの10数分間のショーのために、細かいディテールを積み上げていくのは、プレゼンテーションでは得られない緊張感と高揚感があった。そして、くせになりそうなくらい楽しかった。

ハンドソウ・グッドイヤーで作られた靴も、手漉きの美濃和紙で作った洋服や鯉のぼりも、あえて不均一に織られたファブリックも、天然の泥や藍で染められたスエットシャツも、刷毛でプリントした型染めのシャツも、手書きで入れられたディテールも。すべてのプロダクトにストーリーがあり、着る人のハートに刺さってほしいと思ってデザインしている。ショーを見終わった後、少しでもそれが伝っていれば嬉しい。

自分たちのショーの形ができました。

Dissertation on VISVIM SHOW

写真: 深水敬介