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Dissertation

Doro-Zome (Mud-Dyeing) / 泥染め

高級絹織物として広く知られる鹿児島県・奄美大島の伝統的な大島紬(泥大島)。その渋く艷やかな黒褐色は、奄美に自生する植物を使用し、糸を泥の中に漬け込む「泥染め」によって染め上げられてきた。

Category:Processing
Date:2022.02.01
Tags: #amami #dorozome #muddyeing #ss22 #visvim #大島紬 #奄美大島 #泥染め

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加工中のコート。泥染め加工後に乾燥させた状態。

高級絹織物として広く知られる鹿児島県・奄美大島の伝統的な大島紬(泥大島)。その渋く艷やかな黒褐色は、奄美に自生する植物を使用し、糸を泥の中に漬け込む「泥染め」によって染め上げられてきた。

奄美の方言で「テーチ木」と呼ばれるバラ科の樹木「車輪梅(シャリンバイ)」に含まれるタンニン酸色素と、泥田の中の鉄分の化学結合を利用するもので、繰り返し染色することで絹や綿などの繊維が堅牢な深い黒色へと染まっていく。江戸時代中期にはすでに行われていたとされるこの染色法は、草木染めした着物を田んぼの中に置き忘れた(あるいは隠した)者が後日、取りに行ってみると着物が美しい黒に染まっていた、という偶然によって発見されたとも言われている。

泥染めを行うための泥田は、鉄分を豊富に含んだきめ細かい土質を持つ限られた土地にしか作ることができない。奄美大島では古代から鉄分を多く含む粘土地層の泥が分布しており、上流から水が注ぎ込みミネラルが滞留する山裾に泥田が作られる。

奄美市名瀬、島内でも最大規模の泥田が整備された「本場奄美大島紬泥染公園」。青空の下、大自然に囲まれたこの工房で、〈visvim〉では10年以上前から染色工の野崎徳和さんらとの協同により泥染め加工を行ってきた。

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加工中のコート。左は泥染め加工後に乾燥させた状態。右は乾燥後に洗った状態。

「土地の自然を利用した泥染めの有機的な技法、それが生み出す独特のムラや風合いに人間的な魅力を感じる」と中村ヒロキは語る。「こうした加工を天然繊維だけでなく化学繊維にも施すことで、より人間らしい温かみを持ったプロダクトを生み出せないか」との思いから、泥染めの技術を応用した新たな加工の開発も試みている。

工房の物干し場には、泥田に漬けられた数十着のジャケットが並べられている。糸の状態で染める一般的な泥染めとは異なり、縫製まで済んだ製品をそのまま泥漬けすることで、服地だけでなくプロダクト全体のテクスチュアに独特の風合いが生まれる。

驚くほどきめ細かくトロリとした触感の泥水を吸い込んだジャケットの重量は相当なもの。職人が膝上まで泥田に浸かり、それらを一着ずつ丁寧に泥に漬け込んでいく。乾燥させた後は洗いの作業。金属パーツなどで生地が傷つかないよう、機械を使わずタワシを使い手でこすりながら洗う。この作業を繰り返すことにより、その味わいはさらに深みを増す。古代からの自然の恵みを利用した技術を活かし、現代的な素材に新たな魅力が加えられている。

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加工中のジャケット。泥染め加工、乾燥、洗いの工程を複数回繰り返した状態。

: 井出幸亮

写真、動画: 深水敬介

動画編集: cubism