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Dissertation

F.I.L. (Free International Laboratory)

お店をオープンさせた当初、知り合いから『どうしてF.I.L.にはBGMがないの?』と聞かれました。

Category:Shops
Date:2015.06.02
Tags: #f.i.l #freeinternationallaboratory #エフアイエル
F.I.L. KANAZAWA

お店をオープンさせた当初、知り合いから『どうしてF.I.L.にはBGMがないの?』と聞かれました。

ずっとむかし、お気に入りのアルバムを買ったその日は、まだどんな曲が入っているのかも知らないまま、いちもくさんに帰路について、そして、家に着くとすぐにレコードプレーヤーを前にして座わりました。少し緊張しながらレコードをターンテーブルにのせ、歌詞カードを何度も読み返しながらその度に聞き直す。レコードとプレーヤーを通して、こんな風に音楽と向かい合っていたのは、きっとボクだけではないはずです。

今となっては、ノスタルジックにしか聞こえないこの行為ですが、どこか真剣味があって、まるで心の静寂を取り戻すためのメディテーションでもしているかのようで、実は結構好きでした。音楽に限らず、プロダクトでも何でもインターネットで買える時代です。便利になって、すべてが簡単になって、ボク自身もその恩恵を受けているのは間違いありません。利便性とこのスピードは、消費のスタイルを変えつつあるようにも感じます。

直営店をオープンさせる際に、ボクたちが思うお店のあるべき姿をよく考えました。そして、少しだけシリアスに、商品と対峙できる空間があってもよいのではないかと考えました。そう、少しだけ緊張していただく・・・。そして、ミュージックへの尊厳をもってBGMを流すことをやめました。無音です。音楽が必要なくなった訳ではありません。実はその逆で、ライブパフォーマンスやイベントなどで、音楽と向かい合ってもらえる形で携わりたいと考えました。

ボクは、今の音楽業界が抱える問題を理解しているつもりはありません。ただ一つ言えることは、商品を作る作り手も、ミュージシャンも、現在の消費社会におけるこのスピードの速いサイクルの恩恵を受けているのと同時に、悩まされることになっているのかもしれません。

商品やミュージックの作り手にとって、お客様に向かい合っていただくという事はなんて幸せなことだろう。

心地よくニュートラルな空間で、プロダクトを体験していただくためにF.I.L.はデザインされています。どんな要素がそこにいる人に心地よさを与えるのだろうか?一つ一つの要素をじっくり考えます。天井高、本漆喰の壁、自然光、その光と影のバランス、アンティーク什器。グリーンなどの有機的要素。そしてその空間の香りまで。

ブランドを立ち上げた時、多くの商品はマーケティングされているけれど、実体のないものだと気づきました。ボクはただ、実体を持った何かを作りたかったんです。そのためには、すべての雑音を最小限に抑える必要がありました。

F.I.L.を思いついたとき、ショップのデザインを手伝ってくれる人を見つけるために、多くのお店に足を運びました。たくさんのお店を訪れましたが、なかなか気に入ったものには出会えませんでした。ある日、とあるギャラリーに入ったときに思ったんです。「これがボクのプロダクトを置きたいスペースだ」と。そして、日埜さんにデザインを依頼しました。彼は初めとても戸惑っていました。というのもショップの一部のデザインを求められていると思っていたんです。最初の図面をくれたとき、ボクは言いました「違う違う、ただあなたが普段やっていることをしてほしい。快適なスペースを作って欲しいんです。F.I.L.を神社やお寺のようにしたい。お客様に何の雑音も無く、快適にプロダクトを体験して欲しいんです。自然な光を使って」と。だからギャラリーのアイデアは完璧だったんです。

F.I.L. TOKYO

お店を作る際、ボクらはよく本漆喰の左官職人さんと仕事をします。かつて城壁などにも用いられた彼らのその技術はすべてが手作業です。一見それはただの平坦な白壁に見えるかもしれません。しかし、そこにはわずかなムラがあります。それはなかなか気づくものではありませんが、そのムラがリッチな感触を与えてくれる。それは機械では作ることができません。すべて手作業でやらなければならないんです。自然光を柔らかく反射して美しい陰影をもたらしてくれる壁。これもF.I.L.になくてはならない要素の一つです。

F.I.L. KYOTO

各都市にできたF.I.Lは共通したコンセプトで設計されていますが、本来それぞれの土地や空間が持つアイデンティティーを活かし、それを継承する形でデザインされています。その結果、各地のF.I.L.はそれぞれキャラクターを持ったニュートラルで心地よい空間に仕上がっています。

F.I.L. TOKYO
東京都渋谷区神宮前5-9-17-B1
03 5778 3259

F.I.L. SENDAI
宮城県仙台市青葉区中央2-10-10
022 217 7224

F.I.L. KANAZAWA
石川県金沢市竪町102 
076 222 1625

F.I.L. HIROSHIMA
広島県広島市中区袋町8-8-1F
082 545 3822

F.I.L. KYOTO
京都府京都市中京区下大阪町352 
075 253 0857

F.I.L. NAGOYA
愛知県名古屋市中区栄3-35-19
052 238 0833

F.I.L. FUKUOKA
福岡県福岡市中央区赤坂3-8-26-1F
092 406 4439