Dissertation
Gara-Bou / ガラ紡
手紡ぎに近い機構を持つ、日本独自の紡績機「ガラ紡」。ゆっくりと育てるように糸を紡ぎだすこの紡績機は1876年に発明されました。
Category: | Material |
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Date: | 2015.12.01 |
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Tags: | #garabou #visvim #ガラ紡 |
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手紡ぎに近い機構を持つ、日本独自の紡績機「ガラ紡」。ゆっくりと育てるように糸を紡ぎだすこの紡績機は1876年に発明されました。もともと、水車を利用し川水の流れを動力としていただけあり、現代の紡績機に比べ、その能率は100分の1程度。もちろん均一化された細く綺麗な糸を引くことはできません。しかし、ガラ紡で紡がれる糸は、手紡ぎに近い温かなぬくもりのある表情を持っています。
繊維長が不揃いの落ち綿から、撚り子と呼ばれる棒状の綿を作り、それを円筒形の容器に詰めていきます。垂直に立てた状態で、円筒の中心軸を回転軸として円筒を回転させながら、綿を上に引き出すことにより紡糸を行います。容器の下部には、器が上に吊り上げられると動力を伝える軸が外れ、回転が伝わらなくなるという、円筒の回転をコントロールするための機構が設けられています。これによって、紡ぎ出される糸が太くなると、容器が上に吊り上げられ回転が止まって糸が細くなり、糸が細い状態が続くと容器が下に降り、再び動力が伝わって糸が太くなります。これが繰り返され太さにムラのある糸が紡がれていきます。
紡績が進むと容器内の綿が減り筒の重さが変化するので、糸の太さを調整するため、手作業で筒の下部に吊り下げられた天秤の重りの位置を変えなければなりません。
紡績速度がとてもゆっくりな上、職人さんが付きっきりで見ていなくてならない、時間も手間もかかる大変な作業です。
不均一で独特の風合いの糸を紡ぐ「ガラ紡」は、近代的な機械紡績に圧迫されて衰退し、現在稼働しているのはたった一軒のみ。この貴重な素材を是非手にとって見てみてください。でこぼこしたムラのある生地には、現代のテキスタイルにはない何とも言えない味があります。