JP

EN

visvim Official:

Facebook Instagram

Published by Cubism Inc.:

Subsequence

visvim WMV F.I.L INDIGO CAMPING TRAILER little cloud coffee CONTRARY DEPT

JP

EN

Dissertation

Hand-knit / 手編み

「手編みニット」は身近なものであるが故、何がどう特別なのかが伝わり辛いモノかもしれません。みなさんの身近にも編み物をする方はいるでしょうし、幼い頃に母親が編んだセーターやベストを着ていたというような方も多いのではないでしょうか。

Category:Processing
Date:2019.10.01
Tags: #handkint #visvim #手編み

「手編みニット」は身近なものであるが故、何がどう特別なのかが伝わり辛いモノかもしれません。みなさんの身近にも編み物をする方はいるでしょうし、幼い頃に母親が編んだセーターやベストを着ていたというような方も多いのではないでしょうか。職人が仕事として編み上げるそれは、家庭的なそれと何が違うのか、この道48年のニッター柳内章江さんに話を聞きました。

 

「技術的なことを言うとね、とにかく難しいのは指示寸法通りに仕上げるってことよ」熟練の職人であっても最も神経を使う部分をこう説明する柳内さん。伸び縮みしない布帛と違い編み物の場合には、編み手自身の癖はもちろん、その日の気分などによっても編み目のテンションは変わってしまうため、そうした一つ一つの要因を把握した上で、編み進んだ編み地を時折省みながら力加減を変えたり、編み棒の太さを変えたりすることで、理想通りの柔らかさや寸法に仕上がるよう微調整をしながら編む必要があるのです。1着を仕上げる中でも度々の調整が必要とされるため、数着を同じように編み上げるのは至難の業であることがお分かりいただけるでしょう。

「大切なことは、それのどこがどう美しいのか、ちゃんとわかるということなの。ダメなものの、どこがどうダメなのかということも」仕事として編み物をする上で必要になる感覚を柳内さんはこう話す。「編み手さんはみんな自宅で一人で作業をしてるから、それが自分でわからないとやっぱり仕事にはならないの」作り手としての優れたものを理解する感覚を持ち、仕上がりの理想を頭の中に思い描いて、そこに近づけるように編み進められなくては指示寸法通りにも、思わず触れて見たくなるような柔らかで、それでいて長年の着用にも耐えるしっかりとした編み地の魅力的なセーターには仕上がらないのです。

0119205012002 GALWAY CREW HAND-KNIT (N.D.)

「一番分かって欲しいのは、とにかく時間がかかるってことよね」技術のことはもちろんだが、このこともしっかり理解してほしいと柳内さん。

今回、特にその技術や製作期間について話を聞いたvisivm WMV FALL AND WINTER 2019コレクションの「0119205012002 GALWAY CREW HAND-KNIT (N.D.)」これをもし趣味程度で編み物をしている方が編んだ場合、1着を編み上げるのにかかる期間はおよそ2、3ヶ月。編み柄を覚えるだけでも相当の時間がかかってしまいます。たった1着仕上げるのにこんなにも長い時間がかかってしまっては、当然仕事にも、ましてや売り物にも成り得ません。熟練の職人であっても2週間に1着、一月に2着編み上げられればよいというほど大変な時間と高度な技術が必要とされるものなのです。

0119205012003 TOLEDO V-NECK VEST HAND-KNIT (N.D.)

「だから、手編み製品はどうしても高価なものになってしまうんだけど、よいものは一生着れるでしょ。そういう価値を分かって、長く愛着を持って着てくれる人が増えるとうれしいわ」

ひと昔前は、手編みも機械編みもニットといえば中国製が主流で、柳内さん自身もよく指導に訪れたそうです。しかし、中国内の人件費の高騰や生産性の悪さから、今ではその生産拠点のほとんどは日本へ戻っています。昨今では民芸の考え方が見直され手仕事に興味を持つ方が増えてきている影響で、手編みニットの需要も伸びてきていますが、先に説明したような技術的な難しさ、製作にかかる膨大な時間などがまだまだきちんと理解されておらず、持続可能なビジネスには成り得ていないのが現状です。

 

身近にいる大切な人へ向けた家庭的な手編みの文化はもちろんですが、それとは一線を画す熟練の職人が生み出す優れた手編みの文化も末長く後世へ受け継いでいくにはどうすればよいか。visvimではもう何シーズンも手編み製品を作り続けていますが、モノを作る上ではこうしたことも大きな課題の一つとなっています。