Dissertation
Katazurizome / 型摺り染め
型紙を用いて生地を染める染色技法を総じて「型染め」と呼びますが、型をどのように使って染めるかで染め上がりはまったく別物になります。
Category: | Processing |
---|
Date: | 2017.04.11 |
---|
Tags: | #katazurizome #visvim #型摺り染め |
---|
型紙を用いて生地を染める染色技法を総じて「型染め」と呼びますが、型をどのように使って染めるかで染め上がりはまったく別物になります。
その染色方法は大きく「防染」と「捺染」の2つに分けられます。防染は白生地の上に型を置き、その上から防染糊をつけ、乾燥後に染料で生地全体を染めてから蒸して洗い、防染糊がついた部分だけ白く抜くという方法。捺染は防染の逆で、生地の上に型を置き、その上からへらを使って色糊をつけ、これを蒸して色糊を固着させて模様に色をつける方法です。
この捺染の一つで、生地の上に型を固定してから、へらではなく刷毛を使って染料を摺り込んで染める方法を「型摺り染め」と言い、色糊を用いた捺染に比べ、職人の高い技術が必要とされる染色方法とされています。型摺り染めは「江戸更紗」や「型友禅」などで用いられる染色技法で、図柄の模様や色彩に合わせて必要な数の型紙、大小様々な丸刷毛を用意し生地に直接染料を摺り込んで色を入れていきます。
使用される型は「伊勢型紙」と呼ばれるもので、型地紙(型に用いられる紙。渋紙とも言う)は手漉き和紙を柿渋を用いて手作業で数枚張り合わせ、天日に干して作られます。その型地紙を型彫師が熟練の技と時間を費やして彫り上げたものが伊勢型紙です。染色作業自体も技術を要するものですが、それは、高い技術で作られた型紙があってこそのものです。
染料を摺り込む丸刷毛には鹿の毛が用いられ、型に彫られた模様の大きさや細かさに応じて大小様々なものを使い分けます。柄の細いところは掠れやすいので毛先の長い箇所を使い、太いところは滲みやすいので毛先の短い箇所を使います。丸刷毛は使い込むと少しずつ毛先が減っていくので、毛の長さに微妙な差が生じます。職人はその差を感じながら、刷毛のどの部分で摺りこんでいくかを使い分けています。滲みそうで滲まない、ぎりぎりの量の染料を、刷毛を動かす速さと抑え具合を加減しながら手早く摺っていきます。
刷毛で少しずつぼかしながら、いかに図柄を描いていくか。型摺り染めは同じ一枚の型でも摺りを行う職人によって仕上がりはまったく変わります。その豊かな表情は伝統を受け継いできた熟練の職人の手技がもたらすものです。