Dissertation
Embroidery / 刺繍
針が左右に動く横振りミシンを使い、図案を見ながら職人の手で直接生地に絵を描くように刺繍する日本独自の技法である手振り刺繍。
Category: | Processing |
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Date: | 2017.03.14 |
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Tags: | #embroidery #visvim #手振り刺繍 |
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手振り刺繍
針が左右に動く横振りミシンを使い、図案を見ながら職人の手で直接生地に絵を描くように刺繍する日本独自の技法である手振り刺繍。いまでは、刺繍といえば、図案をデータ化して機械ミシンで自動的に縫い上げるという方法が主流ですが、やはり職人の手振り刺繍でしか縫い上げることができない細かな表現や魅力があります。
もともと和装などで用いられることが多い手振り刺繍ですが、少数のロットの柄や名前などの一点物を縫うときにも使われることがあります。また、手作業で直に縫うので機械ミシン用のデータや、ジャガード刺繍用のパンチカードと呼ばれる型を制作する必要がないため、刺繍加工の試作サンプルなどでも使われることがあります。
横振りミシンの操作には非常に高度な技術が必要とされます。足元のペダルを踏み込む強さによってミシンの早さを調節しながら、作業台の下についているレバーを右膝で横に押すことで糸の振り幅を調整します。さらに、生地を指で押さえながら縦横に動かすことで刺繍の柄を作っていきます。これらの作業を同時に行うには、長い年月をかけて培われた経験と技術が必要です。
針の刺し方はもちろん、糸を入れる方向や糸の密度、生地の質によって大きく変わる糸の縮みなど、全てを計算して機械ミシン用のデータを作り、手振り刺繍を再現することは簡単ではありません。長年、直接生地に自分の手で刺繍してきたからこそ分かる職人の感覚が、手振り刺繍特有のボリューム感や風合いを生むのです。
現在では、横振りミシンを扱うことのできる職人も、ミシン自体の数も減少しており、日本で独自に発展してきた手振り刺繍の技術は希少なものになっています。