Dissertation
Mocassin / モカシン
モノづくりをするきっかけになるのは、心を動かされるような人や物との出会いです。中でも大きな感銘を受けたのが、10代の後半に初めて出会ったネイティブアメリカンの伝統的なモカシンでした。
Category: | Products |
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Date: | 2021.04.27 |
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Tags: | #FBT #mocassin #nativeamericans #vibram #visvim #モカシン |
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モノづくりをするきっかけになるのは、心を動かされるような人や物との出会いです。中でも大きな感銘を受けたのが、10代の後半に初めて出会ったネイティブアメリカンの伝統的なモカシンでした。
広大な北米大陸の森林から砂漠地帯まで、広域にわたり生活するネイティブアメリカン。新大陸と呼ばれたこの地に欧州の人々がやって来るずっと前から存在し、その足元は人類の『最も原初的な靴』である「モカシン」で守られていました。それは、天然素材を最大限に活用した、爪先から踵まで一枚の革が足を包み込むような機能的な靴です。
砂漠や荒野の凸凹とした歩きにくい環境、草原地域といった様々な風土で彼らの足を守り続けた「モカシン」は、部族や作られた時代によって使われている革はもちろん、ビーズや紐を活かしたユニークな装飾やデザインに若干の違いはあるものの、根本的な構造には通じるものがあります。
この美しく機能的な靴を都会の暮らしに合うプロダクトへ昇華したいと思い、ブランドを立ち上げて間もない頃に現代的な技術を掛け合わせてマーケットに提案したのが「FBT」でした。
履き心地の良さ、透湿性を最大限に引き出せるように開発を試みたプロトタイプは、ライニングを省き接着剤などを一切使わずに植物の渋でなめしたエルクの一枚革と、衝撃吸収に長けたミッドソールのEVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)を縫い合わせたものでした。テストとして数ヶ月間履き続けているとアッパー部分に味が出てきて、これを商品化したいという声がスタッフの中から上がってきました。つま先に向かって伸びる独特な傾斜を実現するために、ラスト(木型)を使ってvibramの薄いラバーソールをステッチして完成したのがベアフットシリーズです。
本来、ネイティブアメリカンの履く「モカシン」は鹿の表革を白やベージュになめしたものを使い、靴底になる部分を縫いあわせ、それらが傷み悪くなると交換して長い年月使い続けます。
これまで僕らが作ってきた「FBT」の多くはアーバンテイストの強いスニーカーのスタイルですが、今季はさらにプリミティブなモカシンのデザインにしたいと思い、ラバーをせり上げてカップソールのように仕立ててステッチで留めて仕上げました。もちろん、長い年月をかけて培ってきたナチュラルな素材がもたらす透湿性の高さ、蒸れずに快適な履き心地も継承されています。これまで手がけてきた、数あるモカシンシリーズの中でも気に入っている一足に仕上がりました。